だからって終わってるわけじゃない

・・からツライのかもしんないけど

File No.18 フレンドリーが過ぎる幼児

 

 

風は少し冷たいけれど

 

日差しは夏を引きずっている

そんな平日の午前だった

 

私はスーパーでの買い物を

済ませ、車に荷物を積み

込んでいた

 

助手席のドアを閉めた瞬間

 

何か聞こえた気がして

振り向くと

 

頭上に幼児がいた

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隣のワゴン車の窓からおもっきし乗り出している

 

まるで梯子乗り

(お正月梯子の上で

無茶な体勢をとり”ヤッ”

とか”ヨッ”とか言う人)

 

「おわっ、ビックリしたぁ!」

 

びっくりした私は気持ちを

そのまま口にだしていた

 

さっき来た時は彼の存在に

気付かなかった

 

ということは

 

私が背中を向けて荷物を

積み込んでいる間に

 

窓から乗り出しこのポーズ

をとった

 

・・のだろう

 

 

何故?

 

 

こういうのは

 

久しぶりに会った

おばあちゃんクラスに

やるやつ

 

ではないのか

 

まったく面識のない

 

貼るホッカイロを

貼ったりはがしたり

しているうちに

穴があいたヒート

テックを着ている中年女

 

無職のくせに今更

ポケGoにハマって

課金しまっくている

ゴミくず人間

 

にはもったいない

 

サービス過多である

 

しかし

 

彼はこの世に生を

受けて3・4年、

短い経験の中

この芸で大人を

喜ばせてきた

という自負があるのだろう

 

あわあわする私を前に

未だ体勢を保っている

 

これは

 

称賛なり拍手なり

掛け声なりをかけて

やらねばならないのではないか

 

義務感に襲われ

背中に汗がふき出す

 

「すごいすごーい」

 

「さすが幼児!」

 

「ナイスエビぞり!」

 

とか言えばいいのかな

よし言うぞ

意を決して口を

ひらいた

 

「・・あ

 

 

 アイス落ちるよ」

 

人見知りに磨きが

かかっていた私には

これが精一杯だった

 

男の子ははっとした

ように窓の奥に引っ込

みアイスを食べ始める

 

私は高鳴る胸を抑え

つつ運転席に乗り込んだ

 

車を出す時

 

チラと彼の方に目をやると

 

車の中から両手バイバイ

をしてくれていた

私は手を振り返し

ながら会釈する

 

帰り道、頭の中は

謎の敗北感に包まれていた