だからって終わってるわけじゃない

アラフォー、バツイチ、ヒキニート、だからって終わってるわけじゃない・・からツライのかもしんないけど

沖縄編11 ー気回し女は楽しみ方を間違えるー

 

(修行めいてきた。)

 

 

ロビーの椅子でうなだれる。

 

"来たからには元をとらねば"という朝食バイキングで胸やけ的な貧乏性が発動して、お笑いの予定を詰め込んだが、自分の体力のなさを計算に入れていなかった。しかも、席は全部前の方、ジャンプして頭から飛び込めば芸人さんの 足首を掴めそうな距離である。

 

気持ちの休まる時がない。

   

もちろん毎日、何百何千というお客を相手にしている人達だ、1日中同じ女がいるからといって気にはしないだろう。しないだろうが・・キモくはないだろうか。 

 

事前に情報を集めていたから、同じ劇場で1日に何度も見る人がいることは知っている。けれど沖縄まで来てそれを実行する人がいるのか?こんな前方の席で!

 

さっき隣にいた人も「次は首里城行こっか」って話していたし、普通は観光の合間とかにチラと見るものなんじゃないの?来る前にさんざん友達に言われたことが、いまになって染みてきた。

 

さらに私を追い詰めたのは、新喜劇の中にあったお客さんを舞台にあげるという演出。選ばれたお客さんは舞台上でリアクションをとらねばならず、そのプレッシャーたるや掃除の時間ふざけていたところをみつかり、ぶちぎれた先生に順番にビンタされていくに同等。

 

次は自分かもしれないという恐怖でいっぱいだった。

 

抜け出すことも考えたが、とろサーモンの久保田さんがネタ中に席を離れるお客さんを見つけ、悲しそうしているのを目の当たりにし、やはり悪いと思いとどまる。

 

もう自分が選ばれないよう祈るしかない。

 

そんな私に声をかけてきた人がいた。

 

「あの~この後ってなにかあります?」 

 

若い女性の二人連れ。次のトークライブのチケットが余っているので、もしよかったら1枚譲りたいという。

 

「今日、何回目ですか?」

 

私は二人に聞いた。

 

「1回目ですけど・・」

 

「私3回目なんです」

 

二人が驚いている。

 

「じゃあ同じネタを何度も?」

 

「まぁはい。なので次は休んでその次にそなえようかと・・」

 

「そうですか」

 

「すいません。」

 

前を向くと不安が襲ってきた。

いまの、言い方に険があるように聞こえなかっただろうか「何回見てると思ってんの?こちとら疲れてんだよ。」って。二人に嫌な気分をさせてしまったかもしれない。振り返って弁明すべきだろうか。「急に声かけられてつい、みんなに聞きたいと思っていた言葉が最初にでてしまっただけなんです」と「見れるかわからないですがチケット買わせて頂きます」と

 

迷っているうち新喜劇が始まった。

 

幸い、端のほうにすごく反応のいいグループがいたので、舞台に上げられるのはその内の誰かになりそうだった。

 

問題の場面、芸人さんが舞台から降りてくる。

 

なんとこちらに向かっているではないか。目を合わさないよう下を向いていると彼は私の向こう隣、空席に挟まれ1人で座っている女性の手をとった!20代前半と思しきその人物は、最初こそ首を振って抵抗していたものの、根負けして舞台に上がる。そしてきちんとリアクションをとって席に戻ってきたのだ。

 

1人なのに!

 

戻ったところで両隣は空席、労ってくれる友達がいるわけでもないのに!!

 

会場から惜しみない拍手が送られた。

照れ笑いする彼女の顔は輝いている。

 

(あれが楽しむということなんだ!)

 

私も彼女のように一人でも楽しみたい。そのために来たのに。

 

新喜劇が終わり、会場を出る。外は薄暗く、夜に冷やされた風がコンタクトの水分を奪っていく。夕食を済ませぶらついているとかすむ目に占いの二文字が映った。

 

(よしっ)