だからって終わってるわけじゃない

アラフォー、バツイチ、ヒキニート、だからって終わってるわけじゃない・・からツライのかもしんないけど

沖縄編5 ー心を開いてー

レンタカー会社に着くと運転手さんがドアを開け、荷物を降ろしてくれる。

 

「はーい、どうぞ~」

 

その声はとても優しく、お客を無視するような人の「はーい、どうぞ~」ではない。きっと私の挨拶が聞こえなかっただけなのだ。あの後、何も気にせず話しかけていたなら楽しい時間が過ごせたかもしれない。意固地になっていた自分を反省する。

 

(そうだせっかく沖縄に来たのだ、もっと心を開いて楽しまなくちゃ。)

 

息を吐き、受付に向かう。 

 

受付は若い男性だった。日焼けした肌にゴツゴツとした体格、いかにも沖縄の青年といった風体である。青年のさわやかな笑顔に安堵し、書類に必要事項を記入していく。最後に車体のキズをチェックして欲しいと言われ外に出た。車の周りを回りながら、紙に印刷された車のイラストに印をつけていくのだがその車。

 

 

 

 

 

 

 

角という角、突起という突起すべてにキズがついていた。

 

 

 

 

 

もやもやしながらも、青年が見落としたキズを指摘すると

 

「おっ、いいですね~」

 

褒められる。

 

「えへへっ」

 

(なにを喜んでる?!これではいくら印をつけたとて無意味じゃない!)心の中で叫ぶもう一人の自分とせめぎあいながら、運転席のドアを開ける。

 

禁煙車のはずなのに、シートにはタバコの灰を落としてできたであろう穴がいくつもあった。

 

(これはあれかな、安く貸して返却時に難癖をつけ法外な金額を請求するぼったくり的なやつかな)

 

つのる不信感を押しとどめ運転席に座る。青年がナビを指す。

 

「どちらへ行かれるんですか?」

 

「えーっと、とりあえず海へ」

 

「そこだと・・」

 

窓から身を乗り入れ操作する青年。音量が最小になっていて、画面も暗い。私は直観的に、前回利用した人がナビを放棄したのだと感じた。

 

それもそのはずナビは見るからに年代物で、設定を戻しても動きが鈍く目的地が出てこない。青年は、私が迷わないよう海からまっすぐの施設にゴールを設定してくれた。

 

(親切。こんな人がぼったくりとかするわけない、でもぼったくりバーも客引きの時は優しいはずだ・・)

 

揺れ動く乙女心。

 

心を開いて楽しむのよ。自分に言い聞かせシートベルトをした。青年が何気なく言う。

 

「1人で沖縄きたんすか?」

 

「?・・はい、1人で来ました。」

 

「すごいっすね」

 

 

 

 

 

すごいのか。

 

 

 

自覚はなかったけど私、すごいことをしていたらしい。毎日観光客を相手にしているであろう、レンタカー会社の受付の青年が言っているのだ間違いない。

 

(私って、すごい)

 

えへっと照れ笑いを残し車を発進。

キズだらけのワゴンRで海へ向かった。空港までの車内では暖房を使っていたのに、こっちではクーラーをつけないとうっすら汗ばんでくる。

 

5分ほど車を走らせると目的地到着。車を停め、とりあえず自販機でさんぴん茶を買って一休みした。

 

(・・さーてと)

 

いざという時の証拠用に、私は携帯で穴の開いたシートの写真を撮る。