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だからって終わってるわけじゃない

アラフォー、バツイチ、ヒキニート、だからって終わってるわけじゃない・・からツライのかもしんないけど

骨注射 2

名前を呼ばれ入って行く。

 

看護師さんから細かい問診があり、その後レントゲン撮影。スタッフの方々の対応が丁寧で「ここなら」という期待が高まった。診察室に呼ばれる。70くらいの大柄な男性が椅子にふんぞり返っていた。

 

 

 

「腱鞘炎じゃねーの?!」

 

 

 

大声で言われとっさに返事ができない。

看護師さんにはさっきずいぶん詳しく話したし、再び最初から話すべきなのか迷っていると、医者が私の右手の中指をつかみひっくりかえすようにぐいぐい押し始めた。

 

「痛いか?どこが痛い?」

 

痛いというか驚きのほうがまさっている。私は説明したかった、確かに最初に痛みを感じたのは中指だが、いまは指を曲げた状態で手だけで作業をするときなどに痛みがでる、例えば瓶の蓋を開けようとするときとか、洗濯ばさみを開いて洗濯物を挟もうとするときなど・・頭を整理していると医者がさらに指をひっぱり「どこが痛いんだ?」と声を荒げる。

 

「痛くないです」事実なので仕方がない。・・でも、と事情を説明しようとすると

 

「イタタタタタタタタタ」

 

事前に看護師さんに ×印をつけられていた痛い場所を押された。顔をゆがめる私に気を良くしたのか、医者は反対の手にある印もむぎゅとつかむ。(なんなんだここは)最初の一言でやばい感じはしていたが、こんなにひどいところだとは思わなかった。

 

ようやく医者が手を放す。

 

「注射打つから」

 

注射と言えば腕か尻。脱ぐのか捲るのか看護師さんの指示を待っていると、デカい注射器のぶっとい針が親指の付け根に当てられる。えっえっと声を上げる間もなく針は皮膚を貫通しうすい肉の奥の骨に行きあたる。さらに上から押し込むように医者が注射液を注入。

 

肉の少ない手首近く、どこにこれだけの液体を収める空間があるのだと思っていたら案の定、4分の1ほど残したところで液が入らなくなった。

 

終わり・・かな?

 

涙目で医者を見上げると、医者は一気に残りの注射液を押し出した。

 

「あああああ」

 

あまりの痛さに呻き声が漏れる。針を抜いたら刺した場所からピューと噴水のように注射液がとびだした。なんのために無理矢理入れたの・・。なんだか笑いそうになる。衝撃の光景をなかったことにするように看護師さんが手際よくテープをはり

 

右手にも注射。

 

拒否することもできたろう。でもそんなことしたら医者が黙っていない。それに左をやったのに右をやらないのでは帳尻が合わないじゃないか。葛藤しているうちに針が食い込む。

 

30を過ぎてはじめて人前で号泣すると思った。

 

試合後の矢吹ジョーのように真っ白になってベッドに座っていると、看護師さんが優しく湿布を張ってくれた。「スタッフはいい人なんだけどな」思いながら兄に医者に行ったら聞いてこいと言われていたことを思い出した。残された力を振り絞って聞く「リウマチってことは・・」

 

「ない、そんなリウマチ見たことねー」一笑に付された。

 

 

親指が3倍になったような感覚がする。正直来た時よりも100倍痛い、看護師さんにバッグを腕にひっかけてもらい診察室を出ようとする。

 

「薬だすから来週きて、時間は・・」医者が次の診察について話している。診察は大雑把なのに診療時間については丁寧ね。なんなら診察で交わした言葉の6倍はしゃべってるよね。「・・ありがとうございました」荷物を抱え診察室を後にした。

 

それからその病院には近づきもしていない。幸い良い先生に行き当たり、いまは順調に回復に向かっているが

 

注射痕だけは数ヶ月たった今でもはっきりと残っている。