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だからって終わってるわけじゃない

アラフォー、バツイチ、ヒキニート、だからって終わってるわけじゃない・・からツライのかもしんないけど

軽トラの王子様 2

続き

 

 

 

・・気持ち悪い。

 

 

 

 

 

 

(こんなに急いで食べたのは給食に春巻きが出て、掃除の時間まで一人春巻きと対峙させられた時以来だわ)

 

お見合い相手はさっさと食べ終わりストップウォッチで時間を計るがごとく、私が食べるのと時計とを交互にみている。

 

(だからそんなに急ぐなら先帰れっての)

 

米粒をスプーンで掬いながら怒りを押し殺す私。ようやく最後の一口を頬張る。

 

「ごちそうさまでした」

 

と言ったか言わないかのうちにお見合い相手が伝票を持って席を立った。口の中の米粒を租借しながら必死に後を追う。

 

「あの、帰りは歩きますので」

 

「佐藤さん(おじさん)に言われてますから。」

 

言い残し見合い相手は車を取りに行ってしまった。呆然と立ち尽くす。

 

(これがお見合い。違うでしょいやもしかしてコッチが普通で私がおかしい?)

 

常人としての平衡感覚を失いそうになっていると、キレイなお顔の見合い相手が白馬・・ではなく白い軽トラに乗って現れた。

 

 

 

「さぁ、どうぞ」

 

 

 

運転席からドアを開ける。私の平衡感覚は完全に崩壊していた。

 

 

無言で軽トラをとばすお見合い相手。話かけたら事故でも起こしかねない勢いだ。

 

「ああ、間に合わない」

 

彼の”間に合わない”には(私を送っていたら)という言葉が含まれているのは、尋ねずともヒシヒシと伝わり・・。

 

「あの、私ならここから歩きますのでだいじょ・・」

 

「佐藤さんに言われてますから」

 

(でしょうね!)

 

この軽トラの王子の世界では年長者は王様、逆らうことは許されないらしい。私を送る使命と仕事との狭間でおおいに慌てていた。

 

「その信号で降ろして下さい。」

 

私が言うと、でもと顔をしかめる。信号が赤になり軽トラは停車。軽トラの王子はイライラと指でハンドルを叩いている。私はシートベルトを外しドアを開けた。

 

「あの!」

 

「大丈夫です、家はすぐそこですし歩きます。」

 

降りようとする私に王子が恐る恐る言った。

 

「・・連絡先を」

  

(それもおじさんに言われたんですか?)と聞きたくなった。

 

信号が変わる。

 

私はダッシュボードにメモを置き、車を降りた。

 

「連絡したかったらどうぞ、その代わり自分の意思でお願いします」

 

ドアを閉め歩き出す。おじさんがなんだイケメンがなんだ。

 

 

(言いなりの王子なんていらんわボケ)

 

 

道を渡る私、軽トラが走り去る音を背中で聞いた 。

 

 

その後お見合い相手からメールがきて何度かやり取りはしたものの、話がかみ合わず自然消滅・・以来、軽トラの王子とは会っていない。

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