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だからって終わってるわけじゃない

アラフォー、バツイチ、ヒキニート、だからって終わってるわけじゃない・・からツライのかもしんないけど

伝説の男

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何年も前の話。父が取引先の男性を、家に呼んだことがあった。仕事で会う機会が多く、真面目に仕事をこなす彼をとてもかわいがっていたのだが、会社を退社し独立するという話を聞いて、一度遊びに来ないかと誘ったと言うのだ。私に会わせるのが目的らしい。

散らかった部屋で夜通しバイオハザードをやり、ゾンビドッグの出現に奇声を上げるような女でも、父にとってはかわいい娘。自分の眼鏡にかなう相手の元へ嫁いで欲しいのであろう。私は私で男性の影すら全くない、健全な生活を送っていたものだから、父が惚れ込んだ男性に興味がないわけでもなく・・というか興味津々だった。

 

「面倒だな~」

 

と言いながらも念入りにメイクをし、そこそこいい服を着てみたりする。

「あんた、相手の人きたらお茶だすんだよ」

「はいよ」

母と女同士で打ち合わせをしていると、玄関のチャイムがなる。

 

 

来た!

 

 

と思ったらNくんだった。父と同じ会社に勤めていることもあり、家族ぐるみで付き合いをしているNくん。たまたま近くに来たので寄ったという。「邪魔だから帰れ」ともいえず、台所で話しをしていたら、父が例の男性を連れて帰ってきた。

 

「こんばんは」

 

丸刈りで浅黒い肌・ずんぐりとした体躯にスーツを着ている。

 

 

 

 

 

 

 

火野正平

 

 

 

 

 

 

何故だかその名が浮かんだ。目の前の男性は若い、色黒で坊主という以外なんの共通点もないはずなのに・・。違和感を感じつつお茶の用意をする。父は嬉しそうに彼と話しをしていた。彼は他にも用があったらしく、お茶を飲み終わるか終わらないかのうちに席をたった。チラとこちらを見て会釈をしていく。父が玄関まで見送った。

 

「うーん」母が唸る。私もさっき目が合った時のことを思い出していた。一瞬だったのに値踏みするような、じっとりとした視線がまとわりつく感じ。彼の全身を覆う何かに、母も私も直感的にNOを出していた。

 父の作戦を知ったNくんがニヤニヤ笑っている。問いただすと重い口を開いた。

 

 

 

「あの人、伝説の人っすよ」

 

 

 

伝説?!このご時世に伝説と呼ばれる偉業を成し遂げた人物がいるのか、しかもそれがさっききていた陰気なもとい、物静かな彼だというのか、仕事でとんでもないことやり遂げたとか、逆に取返しのつかない失敗をしたとか・・そうかそれで退職。

 

「違う違う。会社の外での話だよ」

 

聞くとその彼、夜の街それもディープな方の・・言ってしまえば風俗関係のお店でちょっと名の知れた存在なのだと言う。「夜の街で彼の名前を知らぬ者はいない」Nくんは断言した。どうしてNくんがそれを知っているのか、ということはあえて聞かないとして、まさか父連れてきた人がそんな大人物だったとは・・驚くと同時に火野正平の名が浮かんだ理由がわかった気がした。スーツを着ていても、溢れ出る男性ホルモンは隠せなかったらしい。

 

「どうだった?」

 

戻った父、すぐさま母に説教くらっていた。

 
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