だからって終わってるわけじゃない

・・からツライのかもしんないけど

File No.4 ロカビリーおじさん

 

 

高1の秋、生まれて初めてナンパというものを経験した。

 

 

駅ビルに一人で買い物に来ていた時だった。確かにフォルムはかわいい部類に入っていたかもしれない髪は当時流行していた外巻きカール、ミニスカートにニーハイソックスを穿いていたからだ。しかし買い物中とあって分厚いレンズのメガネはかけていたし、なにより友達もほとんどおらず彼氏など妄想の産物だと思い始めていた私にまさか男性が声をかけてくるとは思ってもいなかった。

 

現実を受け入れられなかった理由はもう一つある。

 

相手の容姿だ。

 

 

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50才位で髪はリーゼント、革ジャンに革パンを着込み全身黒のロカビリーおじさんだったのだ。おしゃれな洋服店が並ぶ駅ビルでおじさんは完全に浮いていた。なぜに私?なぜにここで?次々と浮かぶ疑問でパニックに陥っている私に、ロカビリーおじさんは続けた。

 

「お茶でもどう?」

 

こ、怖い。初めてのナンパしかも一人、しかも相手はロカビリーおじさんときている。どう対処していいかわからない。

 

「い・・いいです」

 

とだけいい歩みを早めると

 

「そんなこと言わずに10分だけ」ロカビリーがついてくる。

10分茶をしてどうなるというのだ。ロカビリーおじさんが若返るともロカビリー具合が薄まるとも思えない。

 

(この場に留まるのはまずい。)

 

「いいですいいです」ふりきるようにエスカレーターに乗り込んだ。

(なんだ今のは・・)

自分の置かれた立場を整理しようとしていると

「10分だけ」ロカビリーおじさんが真後ろにいた。

 

腰を抜かすほど驚いたがこれがロカビリーおじさんのナンパ法なのであろう。私は動揺を隠し「いいです」と言い続けた。それでもロカビリーおじさんは諦めない。3階、4階と登っていく。

 

4階から5階へのエスカレーターには他の人も乗っていて駆け上がることはできない。静かに進む階段の上下で「10分だけ」「いいです」の応酬、公衆の面前でロカビリーおじさんに口説かれる地獄の時間が続いた。

 

もうすぐ最上階

 

最上階にはトイレと喫茶店しかない。トイレに逃げ込んでついてこられたら恐ろしいし、喫茶店に入ったらそれこそロカビリーおじさんの思う壺である。

 

(こうなったら下りのエスカレーターに行くしかない。)

 

おじさんとの攻防は無限ループに突入するかと思われたが・・その時ロカビリーおじさんが勝負にでた。断り続ける私に「いいじゃん?」と尻にタッチしたのだ。

 

ポンと手を当てただけではあったが私のショックは大きかった。ロカビリーおじさんを睨むと、下りのエスカレーターに猛ダッシュそのまま1階まで駆け下りて駅前通りへ飛び出した。

 

数時間後、駅ビルに戻ってみるとロカビリーおじさんはまだいた。あっという顔をされ私は走りさったのだがその際何故だか会釈をしてしまう。

 

 

その夜は悔し涙で枕を濡らした。

 

 

数日後、駅前に未成年を狙って声をかける不審者が現れたというニュースが流れる。私はロカビリーおじさんのことだと思った。いま思えば初めてナンパされた相手が不審者だなんて私らしいかもしれない。(その後の人生、ありとあらゆる変な人に遭遇しまくっているからだ。)

 

今同じことされたらどうだろう。

 

人前で尻なんか触られたらやっぱりショックだ。きっとその場に崩れ落ちる。

そして全力をもってして股間に正拳突きをくらわせるだろう。

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