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だからって終わってるわけじゃない

アラフォー、バツイチ、ヒキニート、だからって終わってるわけじゃない・・からツライのかもしんないけど

ハローマイフレンド 2

過去

続き 

 

 

 

 

「かなしくて~かなしくて~」

 

 

 

 

 

当時ドラマの主題歌にもなっていたユーミンの曲だった。つられて大声で歌う。こんなとこまで来て真っ暗闇の中床に転がり歌っている。バカバカしくて笑いがとまらなくなった。

 

歌いながら腹を抱えていると誰かが扉を叩く。隣のプレハブに来ていた家族のお母さんらしき人だった。電気もないところで二人ぼっちの私たちを哀れに思ったのだろう。懐中電灯を貸してくれると言った。私たちはお礼をいい、懐中電灯で交互に顔を照らしながらまた歌った。

 

やがて風が強くなってくる。海がどんどん迫ってきて、床下から水の音がした。私達はバンガローごと波にさらわれて見知らぬ国にたどり着いたらどうするか話しながら寝た。

 

朝の風は冷たい。海に入るのは諦めまたパンをかじる。隣のお母さんに懐中電灯を返し荷物をまとめた。

 

 

「きのうおもしろかったね」

「うん」

 

 

二人肩を並べ駅に向かう。一晩嵐を共に乗り越えて大人になった気分でいたのに、電車ではあいかわらず座席をめぐってケンカになった。

 

来る時、幼馴染はずっと進行方向に前向きに座り窓も開け放題。帰りは交代すると言うから我慢したのに、彼女はまた前に向かって座ろうとする。

 

私は幼馴染のこういう堂々としたわがままなところが嫌いで妬ましかった。しかたがないので半分まで行ったら席を交換すると約束させる。

 

電車は大きな駅で止まり乗客が乗り込んできた。幼馴染は後ろに顔を向け

 

 

 

「手話で話している人がいる」

 

 

 

と言った。見ると私達と同じくらいの女の子二人が手話で熱心に会話していた。頷くと私は荷物に頭をのせて寝た。

 

数分後、幼馴染に起こされる。

 

手紙を差し出された。わけもわからず開いてみると”どうしてこっちばかり見るのか、そんな風にされて自分が逆の立場だったら嫌じゃないのか”ということが書いてあった。

 

 

 

「何これ?」

 

 

さっきの手話で話していた女の子達が持ってきたらしい。幼馴染は私が横になって寝ていたのを向こうが自分達を見ていると勘違いしたんじゃないかと言った。

 

本当かどうか怪しいものだったが、もし本当なら謝らなければならない。メモを出し返事を書く。”そういうつもりはなかったけど、もし嫌な思いをさせたのならごめんなさい”というようなことを書いた。

 

幼馴染が二人の元へメモを届ける。

 

返事がきた。”わざとじゃないのに怒ってしまって、こっちもごめんなさい”という内容だった。

 

安心して手紙をしまおうとすると幼馴染が欲しいと言い出した。

 断ると彼女は口をとがらせる

 

 

 

「カノちゃんばっかりいつもズルい」 

 

 

 

私は驚いた。幼馴染はかわいくて明くて人懐っこくて早熟で、年下なのに身長も胸も私より大きいときてる。面倒なことは人任せ、いいとこばっか首をつっこもうとする人にまさか「ズルい」と言われるとは・・しかも「いつも」ときてる。

 

耳を疑ったが幼馴染は本気で言っていた。

 

その表情には見覚えがある。トイレの手洗い場で並んで立っている時、鏡をみながら髪を直す幼馴染を見る私と同じ表情だ。

 

幼馴染はきっと手話で話す女の子達を見ていたのだろう。仲良くなりたかったのかもしれない、興味があっただけかもしれない、それが二人の怒りをかってしまった。

 

手紙を渡され彼女は自分で解決したかったに違いない。けれどどうしていいかわからず私を起こしたのだ。そして自分のできないことを難なくやった私をズルいと思った。

 

 

 

 

嫉妬は私の役目だと思っていたのに

 

 

 

 

私はずっと”幼馴染は私が持っていないものをたくさん持っている”と思っていた。だけど、その時初めて”私もまた彼女の持っていないものを持っているのかもしれない”ということに思い至ったのだ。

 

手紙の1枚目を幼馴染に渡し背もたれに身を預ける。

やがて約束の駅に着いたが彼女は「席を交換しよう」とは言わなかった。そのまま帰る。

 

不思議ともう腹は立たなかった。


Hello my friend 松任谷由実

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