だからって終わってるわけじゃない

・・からツライのかもしんないけど

スネ夫と私 1

小学生高学年になると、私はエリカとチヅルと遊ぶことが多くなった。

 

エリカは明るくおもしろい、口が悪く怒りっぽいところがあるけれどどんなことも笑いに変えてしまう才能があり、男女とわず友達が多かった。

 

チヅルは真面目で何事もはっきり主張するタイプ、合唱の練習で「男子ちゃんとやってよ!」と泣いてしまうタイプだった。

 

私はといえば、そこそこ明るくそこそこ成績も良くそこそこ優しいお人好しだった。エリカとチヅルと私が集まると"ジャイアンスネ夫のび太みたいだ"と言われた。

 

あながち間違ってはいなかった。

 

エリカは人を笑わすことに長けたジャイアン。笑いながら命令し、拒否すると本気で怒る。拳ではなく"笑い"がエリカの凶器だった。ジャイアンに必要なのは自分をフォローし崇め奉る従順なしもべ。親友という名の奴隷だ。

 

チヅルと私はキャラ的にのび太だったがエリカは満足しない。

 

「チヅルってうざくね?」

「そう?」

「うざいよ!この前なんかさ~」

 

片方がいない時にもう片方の悪口をはじめる。私にスネ夫の役をやれというのだ。しかしここで流されてはいけない。一緒になってチヅルの悪口を言ったが最後、本人に告げ口されるからである。エリカはチヅルに告げ口する際「私も言っちゃったんだよね。ごめん」と先回りして許しを得ているのだから抜け目がない。

 

チヅルはスネ夫となり私を責める。

 

(元はエリカが言い出したことなのに)と思いながらそれを言う勇気もなく謝るしかないのだ。恐らく”自分”という権力者の下でチヅルと私が結託しないよう講じた作戦だったのだろう。

 

エリカと私達の間には地上とマリアナ海溝の底ほどの絶対的な格差があったが、私達は傍目には親友のようにふるまっていた。チヅルと私は外見が似ていた、やせ型で背も同じくらい。二人ともメガネをかけているしいつも一緒。それだけで

 

「こいつら双子みてぇ」

 

とからかわれる。先生でさえ区別がつかず名前を間違うことがあった。それをチヅルは喜んでいるようだった。誰かが冗談を言って

 

「みかんかよ」

 

と小声でツッコむ私の横でそれを聞きつけたチヅルが

 

「みかんかよ!みかんかよだってカノちゃんが!!」

 

と大声で言ったりする。人と同じであること安心感を得るタイプの人間もいるだろうが、私は違う。自分は自分、他の子と同じなんて言われるのは心外だった。

 

ある時、チヅルが髪を切るというので「どうか髪型だけは同じにしないで」とお願いした。理不尽な提案なのはわかっていたが、髪型まで一緒になってしまっては完全に”双子認定”されてしまう

 

それだけは避けたかった。

 

私は短く切ったばかりだったからこれ以上はヘアチェンジできないし

 

「わかった、大丈夫」

 

と言ったチヅルは翌日、私と全く同じ髪型で登校してきた。

”双子確定”である。チヅルは私の所へきて「どう?」と感想を求める。どうもなにも・・言葉がない。立ち去る私に

 

「髪切るのがそんなにわるいことかなあ!」

 

チヅルの声が背中を追いかけてきた。様子のおかしい私にエリカが聞いてきた。私は初めて親友として真面目に相談した。

 

 

「ふーん、で?」

 

 

エリカには興味がなかったらしい。私が話したことは明日にはチヅルの耳にも入っていることだろう。

 

私は家に帰った。

 

悲しくて悔しくて涙が止まらなかった。ジャージのままベットに倒れ込み泣いていると母が上がってきた

 

「どうしたの?」

 

私はエリカに話したようにまた事情を説明した。

 

「なーんだそんなこと、あんたもくだらないことでメソメソしてんじゃないよ。」

 

言うだけ言って去って行った。

あの絶望的なまでのショックと悔しさはなんだったんだろう(続く)

 

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