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だからって終わってるわけじゃない

アラフォー、バツイチ、ヒキニート、だからって終わってるわけじゃない・・からツライのかもしんないけど

File No.10 キャベツ兄さん

 定食屋に行った。

 

 他に誰も客はおらず私たちはいつも通りの物を頼んだ。元々接客が丁寧な店だったが、彼は群を抜いていた。

 

 

「水をお注ぎいたしましょうか」

 

 

考えている間にコップをとられ鮮やかに水が注がれる。3人分のコップを満たすとにこやかに去って行った。彼の体からは私たちのお世話をしたいというオーラが溢れんばかりに出ており(私も接客業を多く経験しており、接客好きは何となくわかる。)

 

 

彼は店にいる数時間お客様に全力で尽くすタイプだと思った。

 

 

フライについたキャベツがおいしいと話しているとそっと彼が近づいてくる。

 

「キャベツのお替りいかがでしょうか」

 

突然話しかけられて焦った母は

 

「とてもおいしくてあははっ、キャベツをお願いします

 

とわけのわからない返事をした。そんな母にツッコミをいれることなく彼はすばやく厨房に取って返しキャベツを注文する。さすがだ。その後はもう彼の世話になることもないだろうと思っていたが塩を手で振っていた兄に新しいおしぼりを持ってきたり、彼のほうはまだお世話し足りないらしい。

 

視界の隅でコチラの様子をうかがっている。 

 

多少居心地の悪さを感じながらもフライをかじっていると、スススッと彼が近づいてきた。

 

 

 

 

 

 

「キャベツのお替りいかがでしょうか?」

 

 

 

 

 

私は頬張った鶏ささみチーズフライをモゴモゴさせながら

 

「大丈夫です」

 

と応えた。彼はにっと笑顔を作ると去っていった。

その笑い方は目を細め鼻に皺をよせるという人が野良猫に敵意がないことを示す時に使うそれであった。私は腹の中でエイリアンが孵化したようなムズムズ感に襲われる。

 

 

その店では食後に温かいお茶を持ってくるシステムになっているのだが、彼は

 

 

 

 

 

「よかったらどうぞ」

 

 

 

 

とまるで自分のとり計らいであるかのように湯呑を置いていった。お礼を言いながら、彼は接客のプロというより接客マニアなのではないかと私は思う。

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