だからって終わってるわけじゃない

・・からツライのかもしんないけど

アニサキスハル16 ―入れ替わってる―

獣医さんから電話がくる。

 

明日手術になるかもしれないと言われ、家族でかけつけた。透明の扉越しのハルは朦朧としていて「とにかく出しやがれ」としゃがれた声で鳴いている。

 

点滴を抜かないように付けられたピンクのカラーが似合いすぎだ。

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すかさず携帯で写真を撮りまくる兄

 

 

 

「ハル、俺だよわかる?」

 

兄の声を聞きようやく私達の存在に気づいたのか鳴くのをやめ、尻尾をくいと動かした。

 

「もう少しで帰れるからな、がんばれよ」

  

「は?もう帰るし」

 

扉をひっかくハルを兄は笑って諭していた。後ろで見ていた私と母はハルの衰弱ぶりにショックを隠せない。

 

寂しくないよう臭いのついた毛布とお気に入りのオモチャを差し入れて帰る

 

 

 

翌日、手術は行われなかった。

 

 

 

容態が悪化したのだ。

改めて手術日を設定、病院は休みになるのでその間一時帰宅してもいいといわれた。

 

抱いて帰る。

 

夕方の町は、仕事が終わり家路を急ぐ人たちの車で込み合っていた。窓に映る景色を指しながら

 

「ほらあそこ、ハルの好きな公園だよヒメちゃんとよくいったよね」

 

「ハル、でかい犬が散歩してるぞ」

 

話しかけてもハルは私の腕の中でじっとしていた。

あんなにドライブが好きだったのに

窓の外を見ようともしない

 

「慣れない入院生活で疲れたんだろ」

 

明るい声が空々しく響く。

 

家に帰るとリンが待ち構えていた

駆け寄るリンを無視してソファーに行くハル。そのままパタリと臥せってしまう。

 

「リンちゃん、お姉ちゃん大事な手術ひかえてるから今日は静かに寝かせてあげようね」

 

床に柵をめぐらせ、ペットシーツをしきつめた。

 

ハルは舌を出して荒い息を繰り返していたが、時折いてもたってもいられないという風に歩き回ろうとする。そのたびに水を手に汲んで口にふくませたり、毛布の方へ誘導したりした。

 

母が布団を持ってきて交代で番をする。

 

夜中、うたた寝してしまった母が目を覚ますとソファーの上にハルがいた。

 

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と思ったらリンだった。ハルは柵の外に座ってる

 

暗がりで似たような顔の2匹が入れ替わっていたため勘違いしたのだ。

 

「何してるの?」

 

母の問いに応えることなく元の場所に戻っていく2匹。何故そのような行動をとったのかは、結局わからないままだった。