だからって終わってるわけじゃない

・・からツライのかもしんないけど

わがまま娘 ー失われたクリスマスー

 

小5までサンタを信じていた

 

クリスマス前になると欲しい物を書いた紙を神棚に供える。

一番天井に近いからという理由でそこに置いていたのだが、和洋折衷も甚だしい。

それに知らないおっさんが屋根裏から手を伸ばし、リストを持っていくことを想像するとめちゃくちゃ怖い。

 

当時はそういうものだと思っていた。

 

年末になると新聞に挟まってくるチラシは分厚くなり

私は兄と競うようにそれらを広げて、サンタにリクエストするプレゼントを選ぶ。

 夢の時間だった。

 

 

 

クリスマス当日

 

サンタを一目見ようと兄と夜更かししていると、母がやってきて早く寝なさいと言う。

 

「えー」

 

電気の紐をひっぱろうとする兄をとめ、窓の鍵を開けた

 

「なにしてんの?」

 

「サンタさんが入って来られないと困るから」

 

「大丈夫だよ」

 

「せっかく屋根まで登ったのに鍵しまってたら、怒って帰っちゃうかもしんないじゃん。ていうか、どうせ来るなら玄関から上がってもらった方がいいよね。そうだ、玄関の鍵開けなくちゃ!ついでにお茶菓子も・・」

 

「大丈夫っつってんだろ!さっさと寝な!!」

 

純粋だった。周りが冷めていく中、世界中の子供たちの家を一晩で回っていくなんてちょっと変だと感じながらも、まだサンタの存在を信じていられたのは、毎年欲しい物を調べて、こっそりプレゼントを置いてくれた両親の演出に寄与するところが大きい。

 

「あんた、今年はなにがいいの?」

 

小5の冬、母がサンタ演出を放棄した。

 

「え?!」

 

「いまからお兄ちゃんとデパート行くから、ついでに買ってくる。なにが欲しいの?」

 

やっぱり親だったんだ。

という感慨にふける間もなく、私はダッシュする。

 

おもちゃ屋のチラシを持ってきて母に見せた

 

それは当時CMでよくやっていた子供向けのミシンで

実際に布を縫うことができる本格的なヤツだ。

 

見た目もシンプルなのにかわいくて、これで犬の洋服や

自分の手さげ袋なんか作れたら最高だと思った。

 

「これね、ピンクのこれだから」

 

「わかったわかった」

 

母は兄を車にのせさっさと行ってしまった。

 

「ただいま~」

 

数時間後、兄が上機嫌で玄関を開ける

手にはスケートボードを持っていた

バックトゥザフューチャーに影響されてスケボーを選んだらしい。

 

「今度私にも貸してよ」

 

「ヤダね」

 

「いいじゃんケチ~」

 

はしゃいでいると荷物を抱えた母が入って来る。

 

「ほらこれ、アンタの」

 

箱を開けた私は愕然とした

 

「な、なにこれ」

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緑と海老茶のミシン・・側面には見たこともない姫が描かれ、説明書は英語である。

 

「全然違うじゃん!」

 

半泣きで訴える私に母がなんだかんだ言い訳する

要するにこっちの方がちょっとだけ安かったということらしい。

 

「ミシンなんだからいいでしょ」

 

「良くないよ!私はずっとあれが欲しくていたんだから」

 

予想以上の反発ぶりにひるむ母

横で見ていた兄が口を開いた

 

「貰っておいて文句いうなよ!世の中にはプレゼントすらもらえない人だってたくさんいるんだぞ」

 

(こ、こいつ・・)

 

自分は確実に希望の品を手に入れつつ、さらに打ちひしがれた妹を踏み台にしてポイントを稼いでやがる。

 

「そうだよ、アンタはわがまますぎる」

 

正論でねじ伏せられ、そのまま説教タイム

サンタとともにクリスマスの楽しみも失った。

 

ちなみに緑のミシンは下糸がなく、縫ったそばからほつれてくる

まったく子供だましの品だった。

 

ぐぬぬっ)

 

悔しさをかみしめる私だが、その後ピンクのミシンとは意外な形で相まみえることになる。