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だからって終わってるわけじゃない

アラフォー、バツイチ、ヒキニート、だからって終わってるわけじゃない・・からツライのかもしんないけど

おもしろい話 1

30代になった頃初めてお見合いをした話。

 

 

お見合い。

 

 

それはドラマの中の出来事で、振り袖をきた美人とお金持ちだけどさえないマザコン男が、ホテルのラウンジや料亭の一室で向かい合い、鋭角に切った竹に水を注ぐ装置がカコンカコン鳴り響くなか

 

 

「ご趣味は?」

 

 

などと形式的な会話をするもの。

 

たまにイケメン俳優が乱入して美人を奪っていってしまうこともあるけれど、身近でそんな話は聞いたことがないし美人でも女優でもない私には当然、縁のないものと思っていた。30を過ぎるまでは・・

 

「あの、ご趣味は?」

 

喫茶店の隅の席、向かいに座るのは小太りの男性がドラマのセリフそのままを口にする。お見合い写真では黒かった髪が茶髪になっていた(今日のために気合いをいれたのだろうか。)と思うと申し訳ない気持ちになる。質問に答えようとすると

 

「ズズッ」

 

横でパスタをすする音が聞こえる。知り合いのおじさんで、お見合いをセッティングした張本人だ。お見合いなんてかしこまった席、とてもじゃないけど耐えられないと恐縮する私に

 

「大丈夫、今はそういうんじゃないから。嫌だったら断ればいいんだし。友達作ると思って気楽にさ」

 

と営業の仕事をしているおじさんの口はうまく、親たちからのプレッシャーもあり、大きな窓を背に人の好さそうな笑みを浮かべる男性の向かいに座ることになった。

 

(ああ、顔が熱い)

 

出がけにやってた天気予報は、5年に1度の冬の嵐を告げていたのに窓からさす容赦のない西日に目を細める。さぞかし不細工だろうと思いつつ、先ほどの質問の答えを探しているとおじさんが言った。

 

「それじゃこの辺で、あとは若い人たちで・・ねっ」

 

口の周りをトマトソースのしみだらけにして、微笑んでくる。

 

「へ(そんな急に?!)」

 

戸惑う私を無視して、おしぼりで顔をふくおじさん。会計の伝票を手に爽やかに去っていった。

 

「行っちゃいましたね・・あははっ」

 

「ははは」

 

笑ってみるが、顔がひきつってしまう。震える手でミルクティーに砂糖を入れると砂糖はミルクの膜に包まれてカップの底に沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

とんだことになってしまった。

 

 

 

 

 

 

初めてのお見合い、開始15分で二人きりにされてしまったのだ。

 

西日は相変わらず平らな私の顔を照らし、30過ぎの肌から容赦なく水分を奪っていく。私は当たり障りのない言葉を交わしながら、頭では別のことを考え始めていた。向かいにいる彼、見た目は小太りで素朴。学生時代は浮かない存在だったが社会人になり実家を継ぐと大人社会に適応、人付き合いが良く先輩にかわいがられるタイプ。に見える。恐らく彼の方も、親やうちのおじさんに勧められ仕方なくここに座ってるに違いない。

 

(お見合いは初めてだって言うし、まぁ今更相手が私であることは変えられないけれど、少しでも楽しい思い出として記憶してもらえたら・・)

 

ここで生来のサービス精神が発動した。私はしゃべりにしゃべり相手の話に耳を傾け、赤べこのごとく同意。彼に楽しい思い出をもって帰ってもらうこと、それが私の任務だと信じて。

 

そして1時間後・・

 

「緊張してたんですけど、お見合いって楽しいですね」

 

(言わしたった!!これだけ西日にあたり、後でシミになったとしてもそれは女の勲章。報われるってもんだね)

 

私は達成感に満たされ、帰り支度を始めた。

 

「じゃあ映画にでも行きましょうか」

 

(映画?!)

 

駐車場。帰りたいとも言えず彼の後に続く私。

 

(いよいよデートっぽくなってきた)

 

先ほどの喫茶店での奮闘で、本日の体力ゲージが0に近づいている。これからの数時間をどう切り抜けようかとぼんやり考えていた。するとお見合い相手の彼が言う。

 

「会社の車で来ちゃったんで、車交換してもいいですか?」

 

「えっでもこの車でも全然・・」

 

「すぐなんで、ちょっと待ってて下さい」

 

そう言うと彼は駐車場に私を置いて去っていった。

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