だからって終わってるわけじゃない

アラフォー、バツイチ、ヒキニート、だからって終わってるわけじゃない・・からツライのかもしんないけど

あとの祭り

小さい頃、夏休みはばあちゃんの家に滞在するのが常だった。

 

毎日のようにプールに通い、畑でとったトウモロコシを食べばあちゃんが干してくれたふっかふかの布団で寝る。絵に描いたような夏休みを満喫していた。

 

その日は夏休み最大のイベント夏祭りの日だった。

1人1000円のお小遣いを与えられ、兄と二人で出かける。

 

小学生にとって1000円と言えば大金である。

 

普段ケンカばかりしている兄妹もこの時ばかりは仲良く並んで歩き、1000円をどのように使うか語り合った。

 

会場につくと入口におばちゃんが立っていた。周りに露店はなく小さな台に光るおもちゃが並んでいる。おばちゃん1人で店を切り盛りしているらしかった。おばちゃんは「早く早く」と言っていた。聞くとトイレに行きたいのだがおじさんが戻らないので我慢していると言った。

 

 

 

こんなところで 1人 おしっこ我慢して

 

 

 

その様子が小学生の私にはなんだかとってもかわいそうにみえた。

 

おばちゃんが売っていたのはプラスチックのカチューシャに触覚のようにバネが伸びたおもちゃで、触覚の先で星がピカピカ光っている。おばちゃんに感情移入していた私は、つい「いくらですか?」と聞いてしまった。

 

 

 

「900円」

 

 

 

かぶり気味におばちゃんが言った。なんという高級品。もしここでカチューシャを買ってしまえば残金は100円ぽっち。会場に入らずして私の運命は終わる。いくら私でもそんな愚行は侵すまいと自分で自分を諫め、少しづつその場を離れようとした。しかしおばちゃんはさらに切羽詰まった様子で「早く早く」と呟いている。

 

私は握りしめていた千円札をおばちゃんに差し出した。

 

緑色の光るカチューシャをお釣りと共にうけとる。

すぐ近くで

 

「バカじゃねぇの」

 

と呟く兄の声がした。

私はさもこれが最初から欲しかったのだという態度でカチューシャを装着する。カチューシャには単三電池が内臓されており見た目より重みがあった。サイズも低学年用に設定されているのか小さい。頭を何とかもぐりこますと耳の裏がズキズキ痛んだ。

 

「・・どう?」

 

頭上5センチを光らせ不気味に笑う妹に兄は冷たく言った。

 

 

 

 

 

 

 

「恥ずかしいからそばによるなよ」

 

 

 

 

 

こうして私はクジや金魚すくいなどでお祭りをエンジョイする兄を、少し離れた場所から眺めることとなった。頭上5センチをゆらゆら光らせながら。

 

しかしやはり物足りない

 

必死に100円で買える物を探し回ったが、どんな物でも最低200円はする。私は兄に100円をめぐんでくれとせがんだ。ずっと楽しみにしていたお祭りなのに、カチューシャ1つじゃ浮かばれない。兄は渋々自分のお小遣いから100円貸してくれた。

 

私はまっすぐある場所に向かう。

 

100円ゲットしたらやろうと密かに決めていたものがあったのだ。

千本釣りといって、豪華な景品が透明の箱の中にたくさん並んでいる露店だ。景品のどれにもヒモが繋がっており中央にぶっとい束となって置いてある。お金を払ってその中から1本選び、引くだけの単純なシステムだ。

 

私は注意深く箱の中を覗き、どれが当たっても損はないと踏んだ。しかし狙うは一攫千金

 

(兄が腰を抜かすほどの大物を引き当てて見せる。)

 

私はなけなしの200円を露店のお兄さんに渡し、慎重に紐を選ぶ。

紐を引いた。思ったより長かったらしい、目の前の景品はピクリともしない。これは期待できる。さらに力を込めて引くと、大きな箱の陰から何かでてきた。

 

 

 

・・くし。

 

 

掌サイズの赤いくしが引っかかっていた。

 

箱の中をのぞいた時はそんなちんけな物いっさい見えなかったのに・・呆然とする私に「はい、景品」とお兄さんが紐を外し渡してくれる。

 

 

 

 

くしなどいるか!家に帰れば腐るほどあるわ!!それに、こんな小さなくし一体何に使えというのだ?!お人形遊びをする年はとうに過ぎたというのに!!

 

 

カチューシャを光らせたままショックで立ちすくむ私。兄がかき氷を食べながら

 

「バーカ、ちゃんと100円返せよ」

 

と言った。

の夏は完全に終わった。

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