だからって終わってるわけじゃない

・・からツライのかもしんないけど

アニサキスハル13 ー秘密の遊びー

 

ハルは遊び好きだ

 

問題は兄がいつも相手をできるわけじゃなく、妹犬のリンをかまおうにも、リンは力も気も強く怒られてしまう。

 

消去法的に家にいる人間、とりわけ暇そうなヤツの部屋に行く。

 

 

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私はそんな彼女をプリンセス・ハルコーと呼んだ

(閉じたはずの扉を開けて入っているから)

 

そのうち二人の遊びが生まれる。

 

 

1.外国の挨拶

まずフランスの名曲ジェーンバーキン「無造作紳士」をかける。曲が終わるまでに頬っぺにキスし続けたら私の勝ち

口にキスしたり、鼻にかみついたらハルの勝ちである。

 

顔を近づけると、ハルは反射的に口と口をくっつけようとする。私はさっとよけて頬にキスする。右・左と繰り返し徐々に口に近づけていくのだ。

 

キスをするたびハルのフラストレーションはたまり、唇がひくつきはじめる。獅子舞のように目をむき口を半開きにした犬に顔を近づけるのだ、なかなか度胸がいる。これは鼻をかまれるかもしれないというリスクに挑む勇気と、素早く身をかわし頬にキスするというテクニックが要されるエクストリームスポーツなのだ。

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ハルに勝てたことは一度もない。

 

 

2.ルンバに乗る猫ごっこ

 

youtubeなどでよく見るルンバに乗る猫、それを忠実に再現する。まずは100均で買った円形の座布団を用意。そこにハルが座り、私が引きずる。

 

「ププ、ピプー」

 

起動音を言って座布団をひき、「ウィーーン」と部屋中をめぐる。はたから見たら、バカと犬のおたわむれだが、かがんだ姿勢のまま体重10kgの犬が乗った座布団をひくのだ

 

これは

 

カンヌ映画祭で赤絨毯をしく係、の運動量と緊張感に相当し

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トムハルが飽きるのが早いか私の体力が尽きるのが早いか、命がけの真剣勝負である。 

 

 

 

3.女王様と従者

 

階段の一番上で出会ったとき、背中を向けてしゃがむとハルがのってくる。

 

ズシリ。

 

階段を一段おりるごとに重みが増していく感覚、背中はきしみ首は悲鳴をあげる。しかし途中で降ろすことは許されない。大事な女王様に万が一のことがあったら従者としての名折れ、目的地まで安全快適にお送りするのが私の使命なのだ。

 

居間の扉を開け、床に膝をつく。

そうっとそうっと

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これらはハルと私、二人だけのノリ。みたいなものだと思っていた

 

のだが

 

「ただいま~」

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こっそり兄がマネしてた。

 

(うらやましかったのか)

 

妹の問いかけるような視線に耐えられなくなった兄は、ハルを背負ったまま無言でさっていった。

   

アニサキスハル12 ー楽園ー

「どーれ、庭の手入れすっかな♪」

 

新居の庭ができ、兄は喜々としてバラの手入れに精を出す。

 

「プーン」

 

それを見ていたハルが窓に鼻をつけて鳴いた

開けてやると、庭に飛び出していく

 

ドッグランを満喫するのかと思いきや・・

 

尻から肥料をひねり出す

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・・庭を広めのトイレと思っているらしい

 

「またやったの?!もう~さっき拾ったばっかなのに」

 

フン慨しながらもハルをデッキにのせチュッチュとやる兄

 

(ご近所の目もあるから!)

 

 

 

ハルはお通じがよく、狭い庭は1日で

ウン◯だらけになる

 

「一回獣医さんに相談した方がいいかな、いいウン◯はいいウン◯だけどしょっちゅうしてるだろ?俺は心配だよ。ハルのおしっこで芝が枯れてきているのも心配だ。」

 

(その話、食事中にしなきゃダメかね)

 

「聞くの恥ずかしいからハル、自分で聞いてくれるか?"ウン◯いっぱい出んだけどアタチ大丈夫かな"って」

 

「・・ププッ」

 

「屁もでるよなぁ」

 

(オイ!)

 

 

 

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(セーフみたいな顔してっけどアウトだかんな)

   

アニサキスハル11 ープロフェッショナルー

 

兄が家を建てるらしい

 

母も自分もいい年だし

いまのうちスーパーや病院に通いやすい市街地に引っ越そうというのだ

 

「(兄が)結婚した時のために子供部屋も作るよ」

 

母は喜んでいたが

私は兄の本当の狙いに気づいていた

 

 

犬御殿

 

 

居間と廊下を仕切る扉には

犬ドアを設置

 

リン用トイレ(ハルは外で

しかしない)を置く場所の上

には臭い防止の換気扇をつけた

 

階段には滑り止めのマットを敷いて

 

庭には柵をめぐらしバラと芝生

を植える。

 

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ドッグランとしても機能させるつもりなのだ。

 

 

 

こうして犬仕様の家は完成

引っ越しも済み

 

 

しばらくは

 

家の細かいメンテナンスや造園の

相談のため業者さんが出入りする

 

 

「こんにちは~」

 

「あっ、よろしくお願いします」

 

「オウッオウッオウッ!!」

 

リンは番犬としては非常に優れた

才覚をもっていたが、いかんせん

立ち入る者はすべて敵と評してしまうところがある

 

業者さんが噛まれる前に

リンには別室で休憩をとってもらう

 

一方、ハル。来客に気づくと

 おもむろに立ち上がり

 

おもちゃ箱をあさりはじめる

 

ボゴッ

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(いらんよハル!そのサービス精神ありがた迷惑だよっ!!)

 

 

しかしハル、ただやみくもに

愛想を振りまいているわけではない

 

無邪気な愛玩犬を装って業者さんの

仕事ぶりを監視しているのだ

f:id:kano8:20181007113004j:plain「どこ座ってんの?!」

 

犬の気持ち兄知らず

別室へ連行しようとハルを抱き上げる

 

そこへ業者さん

 

「すいません、ちょっと失礼」

 

メジャーを取り出しハルの頭部を計測

  

「・・うん、オッケーです」

 

柵の隙間から犬が逃げないよう、設計の参考にするらしい

 

さすがプロ

顧客の要望をしっかり把握しておられる

   

アニサキスハル10 ー熟年夫婦ー

 

「ハル!ハルケン!ハルキチ!」

 

兄がハルに変なあだ名をつけはじめた

(・・カップルにありがちなことだな)

 

「ハリポタ!ハバネロ!ハイネセン!ハリスヒルトン!モンハン!」

 

両手を広げ呼びかける中年男と

少し離れた所で立ち尽くす犬

 

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なかなかシュールな光景だ

 

しかし、このツンデレがたまらない

のか兄はめげることなくハルをめでる

 

「おい、頼んどいたワンコのオヤツ買ってきた?」

 

「あっ、忘れた」

 

「ゴッ」

 

「ハルよ・・その顔やめて」

 

ハルは目が大きい

黙って座っていても驚いているように見えるのに

 

なんてことない出来事に「ゴッ」と鼻をならして

目を剥いてみせるので、すべてが劇的

 

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火サスのテーマが流れそうだ

 

 

 

オヤツの件をごまかすため兄が

ハルを抱き上げソファーに座る

 

ハルはたちまちいびきをかき始めた

 

トトトトトトトトットット

 

ラクターが過ぎてくような轟音

テレビの声さえよく聞こえない

 

「こんなにうるさくて眠れんの?」

 

尋ねる私に兄は当然のように答えた  

 

「耳栓してるしな」

 

「・・ああ、そう」

 

「それより寝相だ、枕の真ん中とりたがるだろ?よけて寝るから首いたくなんだよな、暑がりだから布団かけてもずれてくるし、そのくせ夜中寒くなって抱っこしろって起こされる」

 

 

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(一緒に寝なけりゃいいのでは・・)

 

「まったくお前というやつは!とんだわがままワンコだよ、チュッ」

 

 まぁ結婚生活に我慢はつきもの・・というし

外野は何も言うまい

 

 

やがて兄は特殊能力を身につけた

 

 

 

「くさっ」

 

 

冬、それはオナラの季節

ハルもリンもよくすかす

 

「くっついて寝てるからどっちがしたかわかんないよね」

  

 そんな私に兄は言った

 

 

 

 

 

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オナラで個体識別

熟年夫婦でもこの域には達すまい

  

 

 ↓視聴で火サスのテーマが聞ける

[効果音] 火曜サスペンス劇場アイキャッチ (ドラマ「火曜サスペンス劇場」より)

[効果音] 火曜サスペンス劇場アイキャッチ (ドラマ「火曜サスペンス劇場」より)

 

 

アニサキスハル9 ープライドー

 

父が急逝して数ヶ月後

今度はヒメちゃんが亡くなった

  

「ヒメちゃん、お父さんにくっついてっちゃったんだね」

 

母が言う。

 

ここ数年、ヒメちゃんは父の相棒として

毎朝2キロ程ウォーキングに付き合っていた。

 

朝日の中、黙々と歩く二人の姿が目に浮かぶ

 

「お父さんの1周忌ってすぐじゃん

でも斎場の人、もっと早くもできるっていって

たでしょ?天国行くまでけっこうかかるから

1年待つんだろうにこっちの都合で早めたり

していいわけ?途中だったら?引き返してる

間にヒメちゃんに会って"あれ、お前も?!"

ってビックリするんじゃない」

 

「うーん、どうだろう」

 

「てゆうか二人ともまだそこらうろちょろ

してんじゃないかな」

 

「話聞いてるかもね」

 

「1回でいいから出てきてほしいよ。どうしても会って言いたいことがあるのに。1回でいいからさ」

 

「無理だろ」

 

横で聞いてた兄が割って入る 

 

私達だって本気で言ってるわけじゃない

ただ話さずにはいられないのだ。

 

この前まで「長生きするぞ~」って元気

に歩いてた人がぱっといなくなる。命が

永遠でないことぐらいわかっていたけど、

死んだら消えておしまいだなんて

 

納得できるものじゃない。

 

私だけならまだしも長年連れ添った夫を

失ったばかりの母に・・わざわざ言う

必要があるのだろうか

 

「なに?」

 

「・・別に」

 

 

 

 

 

それから2年が経過して

 

 

「おいで、リン」

 

ハルには妹ができていた。

フレンチブルドックのリンである

 

リンは怪力の暴れん坊で

物は壊す・ケージは破る

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とかなりの問題児だったが

 

手のかかる子ほどかわいい

 

とはよくいったもの

 

「お母さーん、リンがまたウン◯で文字書いた~!!」

 

「こらリン!お隣からもらったカボチャ勝手にかじるな!」

 

何か起きるたび家に笑いが広がり、

外でもリンの武勇伝は鉄板ネタと

して家族に貢献する。

 

一方、末っ子の地位を脅かされる側

になったハル。ヒメちゃんの時みたい

にすねてしまうかと思いきや・・

  

 

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心配無用だった 

 

(お前にプライドはないのか?!) 

  

アニサキスハル8 ードロボーヒゲー

 

父が亡くなった

 

急なことだったため頭が回らず

何をどうしていいかわからない。

 

「大変だったな、お父さん戻るなら布団用意しないと」

 

事情をきいたおじさんが駆けつけてくれた。

私は押入れを開け、布団をひっぱり出す。

 

そこにワクワク顔のハルがやってきた

人がたくさんいるし、なんかおもしろいことが始まると思ったのだろう。

 

 

布団に寝そべりごろんごろん

 

 

「ちょっ、いまそういう感じじゃないから」

 

 

犬たちを2階につれていく。

 

その後、人が続々と現れて挨拶したり父の死に際の詳細を聞かれたりした。

喪主となる兄は葬儀の手配もしなくてはならない

 

おじさんが相談にのってくれたが・・

 

兄の口にはハルの耳

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(・・相当まいってるな)

 

葬儀が終わった頃には 

ヒメちゃんはなんとなく状況を察したようであったが

 

ハルは相変わらず 

オモチャを運んでは投げろとせがむ

 

「畑もみてこねーとな」

 

オモチャを投げながら兄が言った。

 

山の中に父が借りた土地がある

 

もともと野っぱらだった場所で

借りた当初は家族総出で石を拾ったり

雑草の根っこを掘り返したりと

畑として機能させるまでが大変だった。

 

だけど

 

その間、犬達は広い土地で好き勝手

遊んでいられたし

私たちも文句をいいながらも

自然の中で汗をかく楽しさを思い出すことができたのだ。

 

ようやく苦労が実になり始めた矢先・・である。

 

父は自分の作った作物を

ろくに味わうこともなくいってしまった。

 

 

 

 

「やっぱこうなるか」

 

畑はジャングルと化していた。

 

実った野菜と雑草が乱雑に生い茂り

わずかに見える地表も、先日降った雨でドロドロ

 

長靴姿で立ち尽くす私たちの後ろで

テンションの上がりきったハルが駆け回っていた。

 

とりあえず、食べられそうな物だけ回収して車に積み込む。

 

「あれ、あいつどこ行った?」

 

荒い息遣いに振り返ると泥まみれのハルがいた。

 

f:id:kano8:20180919162916j:plainどこに顔をつっこんだのか、泥が口の周りにくっついて

ドロボーヒゲのようになっている。

 

  

 

「「ぶっ」」

 

 

同時に吹き出す兄妹 

父の死後、初めて笑った。

  

アニサキスハル7 ―代替品―

 

兄の溺愛教育の賜物か

ハルは甘えん坊の名をほしいままにした。

 

しばらく姿が見えないなと思うと

ネットサーフィンする兄の膝で寝ている

 

兄が出かけている時は

母や私を代替品として活用した。

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人で充電するアイボのようだ

 

 

 

代替品といえば

 

「どうれ、ビールでも飲むかな」

 

と冷蔵庫を開ける兄、手には缶が握られている。

 

兄は酒に弱く、缶酎ハイ半分で体調を崩す下戸中の下戸

飲み物はもっぱらジュースだったのだが

 

お気に入りをみつけたらしい。

缶を開け、毎夜晩酌の真似事をする。

 

「ビールじゃねぇし」

 

母からのツッコミも夕食後の挨拶みたいになっていた。

 

「コーラ飲むよりいいだろ、トクホだし。カフェイン入ってねーから夜眠れなくなって困ることもない」

 

「私、毎朝カフェラテ飲んでるけど全然眠れるよ」

 

「お母さんもコーヒー飲んでる」

 

「俺は無理、飲んだらその日は徹夜になる」

 

ベッドに入って数分でイビキをかき始める人が何を言ってるんだと思ったが、最近のコンビニコーヒーは発展目覚ましい

 

「カフェイン抜きのもあるよ、普通にうまかったな」

 

情報を提供すると

 

 

鼻で笑う兄

 

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(・・お前にだけは言われたくない。)