だからって終わってるわけじゃない

アラフォー、バツイチ、ヒキニート、だからって終わってるわけじゃない・・からツライのかもしんないけど

アニサキスハル8 ードロボーヒゲー

 

父が亡くなった

 

急なことだったため頭が回らず

何をどうしていいかわからない。

 

「大変だったな、お父さん戻るなら布団用意しないと」

 

事情をきいたおじさんが駆けつけてくれた。

私は押入れを開け、布団をひっぱり出す。

 

そこにワクワク顔のハルがやってきた

人がたくさんいるし、なんかおもしろいことが始まると思ったのだろう。

 

 

布団に寝そべりごろんごろん

 

 

「ちょっ、いまそういう感じじゃないから」

 

 

犬たちを2階につれていく。

 

その後、人が続々と現れて挨拶したり父の死に際の詳細を聞かれたりした。

喪主となる兄は葬儀の手配もしなくてはならない

 

おじさんが相談にのってくれたが・・

 

兄の口にはハルの耳

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(・・相当まいってるな)

 

葬儀が終わった頃には 

ヒメちゃんはなんとなく状況を察しているようであったが

 

ハルは相変わらず 

オモチャを運んでは投げろとせがむ

 

「畑もみてこねーとな」

 

オモチャを投げながら兄が言った。

 

山の中に父が借りた土地がある

 

もともと野っぱらだった場所で

借りた当初は家族総出で石を拾ったり

雑草の根っこを掘り返したりと

畑として機能させるまでが大変だった。

 

だけど

 

その間、犬達は広い土地で好き勝手遊んでいられたし

私たちも文句をいいながらも

自然の中で汗をかく楽しさを思い出すことができたのだ。

 

ようやく苦労が実になり始めた矢先・・である。

 

父は自分の作った作物を

ろくに味わうこともなくいってしまった。

 

 

 

 

「やっぱこうなるか」

 

畑はジャングルと化していた。

 

実った野菜と雑草が乱雑に生い茂り

わずかに見える地表も、先日降った雨でドロドロ

 

長靴姿で立ち尽くす私たちの後ろで

テンションの上がりきったハルが駆け回っていた。

 

とりあえず、食べられそうな物だけ回収して車に積み込む。

 

「あれ、あいつどこ行った?」

 

荒い息遣いに振り返ると泥まみれのハルがいた。

 

f:id:kano8:20180919162916j:plainどこに顔をつっこんだのか、泥が口の周りにくっついて

ドロボーヒゲのようになっている。

 

  

 

「「ぶっ」」

 

 

同時に吹き出す兄妹 

父の死後、初めて笑った。

  

アニサキスハル7 ―代替品―

 

兄の溺愛教育の賜物か

ハルは甘えん坊の名をほしいままにした。

 

しばらく姿が見えないなと思うと

ネットサーフィンする兄の膝で寝ている

 

兄が出かけている時は

母や私を代替品として活用した。

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人で充電するアイボのようだ。

 

 

 

代替品といえば

 

「どうれ、ビールでも飲むかな」

 

と冷蔵庫を開ける兄、手には缶が握られている。

 

兄は酒に弱く、缶酎ハイ半分で体調を崩す下戸中の下戸

飲み物はもっぱらジュースだったのだが

 

お気に入りをみつけたらしい。

缶を開け、毎夜晩酌の真似事をする。

 

「ビールじゃねぇし」

 

母からのツッコミも夕食後の挨拶みたいになっていた。

 

「コーラ飲むよりいいだろ、トクホだし。カフェイン入ってねーから夜眠れなくなって困ることもない」

 

「私、毎朝カフェラテ飲んでるけど全然眠れるよ」

 

「お母さんもコーヒー飲んでる」

 

「俺は無理、飲んだらその日は徹夜になる」

 

ベッドに入って数分でイビキをかき始める人が何を言ってるんだと思ったが、最近のコンビニコーヒーは発展目覚ましい

 

「カフェイン抜きのもあるよ、普通にうまかったな」

 

と情報を提供する私

 

 

鼻で笑う兄

 

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(・・お前にだけは言われたくない。)

  

アニサキスハル6 ―濡れネズミ―

 

兄の提案で犬達を川に連れて行く。

 

山の中の清流なのに足場はコンクリートで整えられていて、犬を遊ばせるにはうってつけの場所だ。

 

蝉がうるさいくらいに鳴いている。

 

おしとやかな見た目とは裏腹に、実は泳ぎが得意なヒメちゃん。つくなり川に飛び込んでプカプカ浮いていた。

 

怖がるかと思ったハルも自分から水に足をつけ、そのままほふく前進。風呂に浸かったおっさんのような顔をしている。

 

しばらく浅瀬で遊ばせていると、岸で休んでいたヒメちゃんと兄が対岸を探索するため歩き始めた。

 

ハルも後を追おうとして

 

 

どぼんっ

 

 

いきなり深みに落ちる。慌てて手を伸ばすが、ハルは対岸を目指し前足を掻いている。

 

(なんだ泳げる・・の?)

 

様子をみていると

 

f:id:kano8:20180823113911j:plain顔だけだした姿勢で、くるくると回転しながら流されていった

 

 

 

 

 

「おおおお溺れてるだろ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

帰りの車中

 

遊び疲れた犬達は、後部座席で寝息をたてている。

 

「パンツまでびしょ濡れなんだけど」

 

「・・すいません」

 

結局全員濡れネズミ

兄妹してハルを救出に走り、水に浸かったのだ。

 

本人に自覚があるかないかは別にして、溺れかけたのは事実

そばにいながらこの失態、保護者の一人としていかがなものかと

家に着くまで兄にチクチク責められた。

  

アニサキスハル5 ―空気を読まない空気―

 

ハルはすくすく成長した。

 

丸い顔に低い鼻、短い尻尾をクイッと動かして喜びを表すしぐさや

時折、笑いすぎた人のように「ゴッ」と鼻を鳴らすくせも愛嬌があってかわいらしい。

 

ただ気になったのが

 

オナラの頻度だ。

 

毛の長さの違いなのか、高貴な出のせいかヒメちゃんのオナラはほとんど聞いたことがないのに比べ、ハルのオナラはしょっちゅうだ。調べてみると、鼻の低い犬種は空気を吸い込みやすいためどうしても回数が多くなるとある。

 

しかし本人はいたって健康

 

弊害といえばワクチン接種を受けたあと

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オナラが止まらなくなり、説明を聞いてる間中

笑いをこらえるのが大変だったことくらい

 

 

いつしかみんな、ハルのオナラを気にもとめなくなっていた。

 

 

ある日、テレビを見ていると

兄の好きな映画がやっている。

 

マイドッグスキップ

 

少年と犬との心温まる交流を描いた実話らしい。

ありがちといえばありがちな話だが、兄が久々に見たいと言うので

みんなで見ることに。

 

少年の元にジャックラッセルテリアがやってきて、少年はスキップと名付ける。いたずら好きだが賢いスキップのお陰で、退屈だった彼の日常が彩られていく・・。

 

ハルも画面の中で走る犬を追いかけたり、鳴き声に首をかしげたりしていたが

 

そのうち兄に抱っこされたまま寝てしまった。

 

物語はクライマックス

 

悪者にケガをさせられ瀕死のスキップに少年が語りかける。

 

 

「ピピッピピピピピ」

 

 

 

 

 

 

 

「くさっ!!」

 

 

一番いいところでオナラ。

出所はもちろん兄に抱かれたハルの尻だ。

 

「手にオナラの感触あったぞ」

 

どうでもいい報告をしてくる兄、目じりが光っていた。

その涙が映画のせいなのか、オナラが目にしみたせいなのか追及したいところだが

 

ここは空気を読んで笑っておく

  

  

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アニサキスハル4 ―テリア気質―

 

ハルを迎え数週間。ヒメちゃんの嫉妬はエスカレート

兄をめぐる女の戦いは熾烈を極める

 

 

かに思われたが・・

 

 

 

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 新人の徹底した低姿勢により、収束。

 ヒメちゃんがすねることはなくなった。

 

夜、1人遊びが好きなヒメちゃんはぬいぐるみ相手にマウンティングをする。

幼いハルは、とにかく誰かと遊んでいたいようだ。ひとたびオモチャを投げるとダッシュで持って来てまた投げろという。これが延々終わらない

 

「また~?もう勘弁して」

 

私が辟易していると兄が言う。

 

「テリア気質だな」

 

テリア気質とはテリアの血をひいた犬種に共通する性格のことで、繰り返し同じ遊びをしたがるハルの性格もそこからきているらしい。

 

そんなものかとなんとなく納得していたら

父が酔って帰ってきた。

 

歓迎する犬達を受け流し、床に仰向けになる。

水を汲みに立つ私

 

「うーん」

 

うめき声を聞いて振り返ると、ハルが父の顔を舐めていた。

 

それはもう熱心に。

 

もし猫だったら父の顔面はズタボロになっているくらい執拗に 

 

 

「テリア気質だな」

 

 頷く兄

 

(言えば済むと思ってないか?)

微かな疑念を抱いていると

 

ハルは父の皮脂を奪い気が済んだのか、今度は寝落ちしそうな父の手にオモチャを運んできて投げろと催促しだした。

 

なるべく遠くに放って時間を稼ごうとする父

 

「ほーら、持って来い」

 

オモチャはうまい具合に向こうの部屋まで飛んで行く

 

 

ハルがあっという間に戻って来た

そして走って来た勢いそのまま

 

 

 

腹にダイブ

 

 

 

強烈なボディを食らった父は悶絶。ハルもさすがに反省したのかオモチャを放り、父の元へ・・

 

そして耳をペロペロ

 

「も、やめてん・・」

 

一部始終を見ていた兄がしみじみ言う。

 

 

「面倒見いいよな」

 

 

(そこはテリア気質じゃないんかい!)

親バカ全開の兄に、みんなが心の中でツッコんだ。

  

 

アニサキスハル3 ―キャバクラの人間模様―

 

ヒメちゃんは、我が家で初めて迎えた血統書付きのワンコだ。

 

父の知り合いがオスとメスを飼っていて、子犬が産まれたからと1匹分けてくれたのだ。

 

家では野良育ちの流れ者や引き取り手のない雑種犬しか飼った経験がなかったが、それだけ犬の扱いには慣れている。血統書なんて付いてようがいまいが関係ないと思っていた。

 

しかし、ヒメちゃんは今まで飼ったどのワンコとも違う。

 

賢くすぐに人の言葉を理解できるのだが、気分屋で怒りっぽい。

呼んでも来ないし、寝てる頭をなでようとすると「ギャウ」と怒られる。

 

気位の高いお嬢様といった感じだ。

 

みんな最初戸惑いはしたものの、ヒメちゃんのツンデレな性格の虜になった。車も平気だったので色んな所へ行った。海に山に湖に、ヒメちゃんは家の末っ子としてみんなにかわいがられていた。

 

そこへ突然、ライバル登場である。

 

内心気が気じゃなかっただろう。

 

兄はなるべくヒメちゃんを優先しようと心がけていたが

子犬は手がかかる。

 

「ハル、ミルク飲もっか」

 

「ハル、おもちゃだぞ~」

 

(アイツこないだまでアタシにメロメロだったくせに、白黒にかまってばっかじゃない。気に入らねぇ)

 

と思っていたかは定かじゃないが、ヒメちゃんはすねた。

 

たびたび居間の隅っこや廊下で、これみよがしにすねてみせていた。

兄が機嫌をとろうと近寄っていく。

 

「ヒメちゃ~ん、どうしたこんなところに座って。こっちでみんなと・・」

 

 

 

「ギャワン!」

 

「いってー、咬まれた」

 

痛がる兄にオモチャを見せようと運んでくる子犬。

 

不動のナンバー1が天真爛漫な新人に嫉妬、店長(兄)は板挟み

 

 

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キャバクラの人間模様をみているようだった。

  

 

アニサキスハル2 ―あからさまに嫌そう―

兄と犬との出会いは突然だった。

 

家族でドライブしてた際、たまたまわんわんフェスなる看板を見つけて寄ってみることにしたのだ。

 

「色んな種類のワンコが集まってるんだって」

 

「ボステリいるかもな」

 

兄はジョジョの奇妙な冒険を読んで以来、ボストンテリアという種類の犬にぞっこんだった。今でこそ公園でボステリを連れた人に出会うこともあるが、当時はまだ珍しく、近くのペットショップでボステリを置いているところは皆無。

 

今日こそ実物を見れるかもしれないと、兄は浮足立っていた。

 

広い会場は人に埋め尽くされている。

 

ワンコの姿は見えなかったが、漂う獣臭に彼らの存在をはっきり感じることができた。

 

「アルパカだ!」

 

さっそくはぐれる私

数年後、顔に黄色いツバを吐きかけられることになる動物とは露知らず満面の笑みで近寄っていく。

 

しばらくアルパカをもふもふさせてもらい満足すると、会場をめぐった。半分はミニ動物園、残りの半分はペットショップが出店していて、財布と環境さえ許せばその場でワンコを家族に迎えることができるらしい。

 

様々な種類のワンコ達に目を細めていると

少し先に兄がいた。興奮気味に手招きしてくる。

 

「いたぞ」

 

兄の目の前のケージに小さな白黒の塊がある

(ハムスターみたいだな)

 

「どうする?」 

 

「どうするって・・まさか」

 

ケージの下についた値札を真剣に見ている。

 

「飼わないよ!」

 

ぴしゃりと言ったのは母だった。

私達の思惑を察して、異を唱える。

 

「俺が面倒見るし、病院とかかかる費用も全部もつ。」

 

「そんなこと言っていっつも最初だけでしょ、昼間めんどう見るのはお母さんなんだから」

 

「でかくならない種類だし、手かからないって」

 

「でもねぇ!」

 

「ちょっと抱いてみますか?」

 

ここが勝負時と判断したのだろう、ワンコの管理をしているらしき女性が白黒を腕に抱えている。

 

「抱いたら情が移っちゃう、いいですいいです・・あらかわい」

 

母、陥落。

手続きを済ませ車に戻った。

 

「ただいまー」

 

「なんだ?!飼っちまったの?!」

 

後部座席で寝ていた父が飛び起きる。

 

「知らねーぞ、ヒメちゃんに怒られても」

 

父の横にはそれまで兄の寵愛をほしいままにしてきた犬、ヒメちゃんが座っていた。

 

「だーいじょうぶだって」

 

ケージから子犬を取り出し、嬉しそうに自分の鼻と子犬の鼻をくっつける兄

 

「これからよろしくね」

 

と子犬の尻をヒメちゃんの前に持ってくる。

 

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 (・・あからさまに嫌そうだな)

あそこまで気持ちが顔に出てる犬、初めて見た。